窒素・リン |
窒素・リンなどは生物の栄養源ですが、水中濃度が高くなる(富栄養化といいます)とプランクトンが大量発生して赤潮・アオコを引き起こしたり、稲の成育障害などを起こしたりします。水中の窒素・リンの起源は、生活排水・農畜産排水・工場排水などが主体ですが、自然由来のものや大気汚染によるものもあります。
なお、本調査結果では窒素、リン、COD、BODの調査項目を「一般項目」と総称しています。これらの項目は、水質調査で一般的に測定される項目です。 |
△項目に戻る |
全窒素(T-N) |
水中の窒素分には有機態窒素と無機態窒素があり、その合計が全窒素(T-N)です。有機態窒素はタンパク質、アミノ酸、尿素などに含まれており、生体内や環境中で無機態窒素に分解します。無機態窒素には有機態窒素の分解に由来するものと、化学肥料などに由来するものがあり、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素に区分されます。 |
△項目に戻る |
アンモニア性窒素(NH4+-N) |
水中の有機態窒素(タンパク質・アミノ酸・尿素など)は、分解されてアンモニア性窒素になります。有機態窒素の分解・酸化が十分に進んでいない場合、水中のアンモニア性窒素の濃度が高くなります。悪臭の原因物質です。 |
△項目に戻る |
硝酸性窒素(NO3¯-N) |
水中のアンモニア性窒素は、硝化菌の働きにより亜硝酸性窒素(NO2¯-N)になり(酸化)、さらに硝酸性窒素(NO3¯-N)に変化します(酸化)。また、脱窒菌によって亜硝酸性窒素・硝酸性窒素が窒素ガス(N2)化され(還元)、水中から窒素分が除去されます。 |
△項目に戻る |
水中の窒素の形態について |
水中の窒素の存在形態を図示すると、次のようになります。
有機態窒素
(タンパク質、アミノ酸、尿素などに含まれる) |
|
△項目に戻る |
全リン(T-P) |
リンは生物体ではリン酸の形で核酸などを形成しており、代謝されて尿に排泄されます。水中のリンの全量を表したものが全リン(T-P)です。 |
△項目に戻る |
リン酸態リン(PO43¯-P) |
リンは農業排水、畜産排水や生活排水に含まれており、また工業にも多用されています。窒素と共に富栄養化の指標として用いられます。 |
△項目に戻る |
COD(化学的酸素消費量) |
水中の有機物の量を表す指標で、薬品によって酸化される有機物などを薬品の酸素量で表したものです。日本では、湖沼や海域の環境基準にCODが使われています。 |
△項目に戻る |
BOD(生物化学的酸素消費量) |
水中の有機物の量を表す指標で、微生物が水中の有機物などを分解し、20℃で5日間静置した時に消費される酸素量を表したものです。日本では、河川の環境基準にBODが使われています。排水を河川に放流した時、河川中でどのくらい酸素を消費するかを知るために作られた指標です。 |
△項目に戻る |
単位について |
水中の物質の濃度を表す単位として、mg/L、µg/Lなどが用いられます。mg/Lとは、1リットル中の水に溶けている物質の量をミリグラムで表したものです。これを濃度で表したものがppm(ピーピーエム)になります。ppmとは百万分の一(parts
per million)を表しており、正確にはmg/kgですが、水1リットルは約1kgなので、ppmはmg/Lと同じ意味で使われています。同様に、µg/Lはppb(十億分の一・parts
per billion)と同じ意味で使われています。 |
△項目に戻る |
変異原性 |
変異原性とは、一般には「遺伝子(DNA)に突然変異を起こす性質」のことを指します。発ガンの第一段階として、ガン遺伝子やガン抑制遺伝子が突然変異することが知られています。これらのことから、変異原性は発がん性の第一次チェックとして幅広く用いられています。
私達の調査している河川は、水道原水として用いられていることが多々あります。しかし、水道原水が有機物などによって汚染されている場合、浄水場での塩素処理時に、水道原水中の有機物と塩素が反応して多種類の有機塩素化合物が生成します。そして、それらの中には変異原性や発ガン性を持つ物質も含まれているのです。
そこで私たちの調査では、試料水に浄水場と同様の塩素処理を行った後、変異原性試験を行うことによって、その水が水道原水となった場合にどれだけの変異原性を生成する潜在能力を持つかということ(変異原性ポテンシャル)を調べています。
また、生物を用いた試験であるために試験ごとに若干の変動があるので、結果に普遍性を持たせるために、結果はAF-2の変異原性の強さ(単位:ngAF-2/L)に換算しています。AF-2は強い発がん性と変異原性を持つことが確認されており、この表示は「試料水1L当たりの変異原性の強さがAF-2として何ngに相当するか」ということを示しています。 |
△項目に戻る |
トリハロメタン(THM) |
トリハロメタンとは、メタン(CH4)の水素原子(H)の3つが塩素(Cl)、臭素(Br)などの「ハロゲン元素」と呼ばれる元素で置き換わったものの総称です。浄水場での塩素消毒によって、水道原水中の有機物と塩素が反応してトリハロメタンが生成することが知られています。クロロホルム(CHCl3)などの水道水中で検出されるトリハロメタンは、発がん性や変異原性を持つことが確認されており、水道水の安全性を考える上で大きな問題となっています。水道水質基準においても、トリハロメタン類について基準値が設定されています。
私たちの調査では、「試料水が浄水場と同様の塩素処理をされた場合、どれだけトリハロメタンを生成する潜在能力を持つか」ということ(トリハロメタンポテンシャル)を調べています。トリハロメタンポテンシャルが高ければ、それだけ試料水が有機物によって汚染が進んでいることを示しており、これにより水道水源としての水質の安全性を定量的に評価することができます。 |